彼女と初めて会ったのは、小さな森の中だった。 俺は旅の途中で。今となっては理由も覚えていないが、其処に住むという少年を探していて。 手配書を頼りに探していたら、少年と同じ顔した少女が、膝を抱えて蹲っていた。 ――あの、ね。マオと、喧嘩しちゃったの。 これまで一度も離れたことのない弟と喧嘩したから不安だと。出会ったばかりの男に警戒心無く話す少女の状況は、よくあるすれ違いだからこそ、当時の俺に最も遠いものだった。 すれ違う程に感情をぶつけ、想える相手がいる少女を羨ましく思った。 ――淋しいの? 瞳に心を透かされて。 七つも年下の少女の前で、子供のように俺は泣いた。 (ある男の記憶)
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