「…………、」
 云う事に従うのは癪だが、目先のプライドにこだわっていてはこの悪夢のような状況から抜け出す事は出来ないとキサは判断する。というか散々羞恥に悶える姿を見せているのだ、どれもが今更な話だった。
 コイツを諦めさせるには、とりあえず従うしかない。
「……ふ、ちゅ…」
 覚悟を決めて、おずおずと舌を絡めた。長い指には思った通り、うっすらとしか肉が付いていない。骨と皮だけのそれは、鳥の足を連想させた。
「……なかなか上手いな。男のを咥えた事でもあんのか?」
 んなわけあるか。視線で訴えるが、通じたかどうか。
 人の指も男の欲望も舐めた事の無いキサは、見よう見まねと云った風に中指と薬指を唾液で塗れさせていく。こんな時でも几帳面なキサは舐め方さえ丁寧だ。爪の先まで丹念に奉仕する姿は、なかなかに色気がある。
「そろそろええか」
 クラウディオがキサの口から指を引き抜いた。キサの手を引いて、またもやソファに押し倒す。力の抜け切った身体はいとも簡単に舞い、クラウディオはキサが頭を打たぬように後頭部に自身の腕を滑り込ませた。
 というか――そろそろ?
 そろそろって、なんだ?
「力抜けきっとるし、大丈夫やろ」
 キサの唾液に濡れた指を、見せつけるように自身でも舐めて。仰向けになっているキサの尻を高々と上げた。赤子のおむつを替えるような姿勢に、キサが眼を釣り上げる。
「お、ま…っ……そろそろほんと、いい加減に――!?」
 つぷり。誰も触れた事の無い蕾に、クラウディオの中指が埋まった。
 ギチギチと無理矢理開かれていく、今までにないくらい不快な感触。気持ち悪さに喉が詰まる。
 第一関節まで埋まった指を縦横に動かして、ずぶずぶと開かれていく。そんなところに指が入る事にも、クラウディオがそんなところに入れようと思った事にも、キサは衝撃を隠せない。何処に指を入れているのか、コイツはちゃんと解っているのだろうか?
「抜け……。はや、くっ……」
 そこは排泄をする為の、身体の構造上必要な場所というだけで、決して何かを入れる場所ではない。クラウディオは眉間に皺を寄せ、「慣らさんと入らんだろ」とキサには理解不能な事を当然のように云う。
 解らないのは怖い。視界を遮られたのも怖かったが、今の比ではない。何をするつもりなのか、本当に解らない。
「やけに狭いな。処女か」
 指に絡めた唾液だけでは潤滑油として足りないと判断したのか、クラウディオは身を屈めて蕾に舌を伸ばした。柔らかい舌は押し返して来る内壁をものともせずに蕾の中に侵入する。ひ、とキサの全身が強張った。
 蛇のように長い舌がにゅるりと内壁を舐める。クラウディオの唾液が零れて、尻を伝うのが解った。足を振り上げて蹴ろうとするが、膝裏を手で抑えられてはそれも出来ない。
「止め、ろ……気持ち悪いって云ってる……ッ」
 舌を抜いて、また中指を埋める。ぐちゃぐちゃに解した蕾は、美味しそうにすんなり飲み込んだ。
 嘲るようにキサを笑う。
「胸だけやなく後ろもイイんか」
 先程まで入っていた舌を見せ付けるように伸ばせば、それを見てしまったキサの顔が歪んだ。
 指ですらキュウキュウと締めつけてくる蕾に、もう一本は難しいかと思う。だがヒクヒクと震える秘所は、「まだ欲しい」と訴えているようにも思えて。
 どうしようか。無理矢理入れてもいいけど、あまり血を流させたくない。
 目線を上げて、キサの全体像を下から上に眺める。張り詰めた一物、汗ばむ肌、熟れたトマトを思わせる頬色、今にも泣き出しそうな怯えた表情。
「――、エロいな」
「誰のせいだ!」
 前言撤回、反抗的な態度を改めさせるように無理矢理薬指を埋め込む。やはりキツイ。二本に増えた指に、キサの腰が退く。
 構わずクラウディオは二本の指を奥にゆっくりと動かした。痛みからか、キサの瞳に涙の膜が張られる。慣らされたおかげで幾分かマシになったとはいえ、痛いものは痛いし不快なものは不快だ。そもそもキサはこの状況を望んでいない。異常としかいえない刺激に、キサのモノが萎れかけた――と思われたその時だ。
「んあッ!」
 クラウディオが指を軽く曲げた瞬間、目の前が白くなった。全身が痙攣するが、解放感はない。同じところを再度擦られれば、声を我慢出来ぬほどの刺激が訪れた。





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